世界的に広まっている「スローフード」。
生活に不可欠な食事に関係するワードとして、1度は耳にしたことがあるかもしれません。
ただ「ゆっくり食事すること?」「地産地消とどう違うの?」など、どんなモノかはわからない…という方も多いはずです。
そこで今回はスローフードの意味やメリット・デメリットを、どこよりもわかりやすく解説していきます。
気軽にスローフードを生活に取り入れる方法も紹介しているので、スローフードに興味がある方はぜひ一読してみてください。
スローフードってどんな意味?地産地消との違いは?

スローフードとはざっくり説明すると、伝統的な食文化を見直し、食への関心を高める運動のこと。
「早い・安い・便利」な、ファストフード(fast=早い)に対する言葉としてよく使われています。
ファストフードは「食材の生産地や調理・加工方法が不明」「大量生産によるコスト削減が最重要」といった側面から、人体への安全性が疑問視されてきました。
これに対し、「地元の生産者によって丁寧に育てられた、土地に適した食材を使ったきちんとした食事をしよう」という考え方が、スローフードです。
モットーは「おいしい・きれい・正しい」で、下記のように幅広い意味が含まれています。
- 伝統的な食事を大切にする
- 有機農業を推進する
- 地域の食材を消費して地元の生産者を守る
- 生産者に妥当な対価を支払う、環境に優しい生産方法を心がける
- 健康によい食事をする など
「“作る人・食べる人・環境”のすべてを大切にする食生活」と考えると、わかりやすいでしょう。
ただ単に「時間をかけてゆっくり食事を楽しむ」という意味ではないんですね。
またフローフードに似た言葉に「地産地消」がありますが、正確には”スローフードの考え方の一部“。
ただ地産地消は文字通り、「地元で生産された食材を、地元で消費する」という意味があります。
上述のとおり、スローフードはもっと広い意味・目的がある言葉。
地産地消は「その地域の食材を消費すること」に限られますが、スローフードは「スローフードの概念に当てはまれば、どの国・地域の食材を食べても問題ない」のが違いと言えるでしょう。
「スローフード運動」の発祥はイタリアでの抗議運動
スローフードという考え方が生まれたのは、1986年頃のイタリア・ローマ中心部。
ファストフードの代表、『マクドナルド』の出店に対して起こった抗議運動がきっかけです。
当時、食文化雑誌『ゴーラ』の編集者カルロ・ペトリーニが同志を集めて
「私たちはスローフードを望みます!」
というスローガンを掲げたのが、”スローフード”という言葉のはじまりでした。
残念ながらマクドナルドの進出は止められなかったものの、以降「スローフード運動」が続いていくことになります。
1989年には「スローフード協会」が発足。
ちなみにシンボルマークは、”スロー”の象徴である「カタツムリ」なんですよ。
スローフード協会は発足~2020年現在までの34年間、多数の活動を実施。
- スローチーズキャンペーン
- スロー・フィッシュキャンペーン
- アース・マーケットの発足
- スローフード生物多様性財団の発足
- アフリカの菜園プロジェクトの発足
- 味の箱船プロジェクト など
現在は世界150カ国以上にまで会員が及び、今後もスローフード運動の拡大に期待が寄せられています。
スローフード協会の活動と目的
現在スローフード協会(Slow Food International)はイタリアに本部を構え、大きく3分野で活動しています。
もちろん日本にも「日本スローフード協会」があり、さまざまな活動に参加できますよ。
全国各地で定期的にイベントを開催しているので、公式サイトやSNSを確認してみてください。
※タップ・クリックでリンク先へ移動します。
食の国際イベント「テッラ・マードレ」が象徴的!

スローフード運動の中でも代表的なイベントが、「テッラ・マードレ※」。
※イタリア語でTerra Madre=「母なる大地」を意味する。
イタリア・トリノで隔年で開催される、「食に関する意見交換の場」です。
スローフードに賛同する生産者、加工業者、研究者、料理人、ジャーナリストなどが世界中から参加します。
2006年に実施された第二回には、150カ国から8,487名の参加者が集まるほど。
イベントではスピーチやワークショップなどを通して、食にまつわる諸問題や社会問題(貧困や労働環境など)、地球環境などが学べます。
また「サローネ・デル・グスト(味の見本市)」も併催され、出店している世界各国の食品を実際に味わうことも。
日本からは日本料亭の「吉兆」が参加したこともありますよ。
テッラマードレは生産を支える参加者からスローフードに賛同する消費者まで、しっかりと食について考えるためのイベントなんですね。
世界規模で開催されるテッラ・マードレのほか、各地域や分野に分けて開催するテッラ・マードレもあります。
日本スローフード協会も参加した直近のイベントは「先住民族テッラマードレ アジア・環太平洋 in アイヌモシリ(2019年)」で、アイヌの食文化を世界に発信しました。
スローフードのメリット

上記を踏まえて、スローフードを取り入れるメリットは下記のとおりです。
- 健康的で美味しい食事ができる
- 消費者も生産者もWINWIN
- 伝統的な食文化が守られる
- 環境や地球にも優しい
- 多様な品種を育てることで、環境変化に対応できる
スローフードは食べる私たち、生産者、地球環境にやさしい考え方。
一人一人が食事に関心を持てば、今まで抱えていた健康問題や環境問題の解消に一歩踏み出せるはずです。
スローフードのデメリット
スローフードのデメリットは、カンタンに言えば「高い・遅い」こと。
そもそもファストフードは、人々のファストライフに合わせて誕生したもの。
安い・早い・おいしいのが売りで、忙しく暮らす現代人にとっては欠かせないのが現状です。
実際にスローフードをしっかり実践するには、生活スタイルを変えないと難しいでしょう。
食材を探す。調理する・食べる時間にゆとりが持てないと、スローフードのハードルはやや高いと言えます。
だからこそ”ファストフードを絶対悪”として捉えず、まずはスローフードに関心をもって少しづつ取り入れることが大切なんですね。
まずは食生活の見直しから!スローフードを取り入れる方法

気軽にスタートできる方法として、おすすめなのが「週末だけスローフード」。
まずはお休みの日だけ、食材や調理法にこだわってみましょう。
- 朝市で販売している地元の食材を選ぶ
- 有機農法で育った野菜を自然食品店で購入する
- 自分で調理する など
慣れてきたら「その食材を誰がどのように作っているのか」「フェアトレードなのか」「環境に優しいか」なども心がけられるようになるといいですね。
先述したように、スローフード協会のイベントに参加して知識を高めるのもオススメですよ。
スローフードには「絶対に協会に加入して、こういう生活を送らないといけない!」という決まりはありません。
まずは自分の食生活を見直して、「体に優しい食事+生産者・環境に優しい選択」を心がけることが大切です。
大量生産・大量消費やファストフードといった”便利な食文化”が、社会の発展に貢献してきたことは事実です。
ただ品種の減少や健康問題、労働・自然環境の悪化など、大きなデメリットも潜んでいます。
人間は食事なしでは生きていけません。
80歳まで生きた場合、食事する回数はなんと8万7,600回にのぼります。
だからこそこの機会に、スローフードを通して食文化を考えてみるのも有意義でしょう。
まずは地産地消・オーガニック食品・自炊など、実践できるところから試してみてくださいね。
